リハビリテーションを効果的に行ううえで、同時に考えて頂きたいのが必要なカロリーと栄養素です。エネルギー摂取量(カロリー)や、筋肉、皮膚、内臓などの体をつくる「たんぱく質」やビタミンが慢性的に足りない状態を「低栄養」といいます。また、「低栄養」は急激に体調が悪化するような状態ではありません。しかし、栄養が満足にとれない状態が続くと、徐々に体に悪影響を及ぼすようになります。高齢者の場合は栄養状態を確認することで基礎疾患にも対応でき、筋肉の増加にも繋がります。
低栄養の要因
●身体的要因
摂食・嚥下障害、消化・吸収・代謝機能の低下、味覚・視覚・嗅覚など感覚機能の低下、運動機能の低下、慢性疾患など
●精神的要因
孤独感、社会的疎外感、認知症・うつ病などの疾患、家族や友人との死・離別、生きがい・生きる意欲の喪失慢性疾患、食事や調理への関心の喪失、コミュニケーション障害、閉じこもり
●環境的要因
経済的困窮、買い物・調理能力の欠如、栄養知識の欠如、移動手段の減少、不十分な調理、独居
栄養素を補う食べ物を上手に料理に取り入れていきましょう。
「タンパク質」… 卵・肉・魚・牛乳・大豆など
「ビタミンB6」… にんにく、まぐろ、レバー、ピスタチオ
「ビタミンB12」… 貝類(しじみ、あさり、はまぐり)、レバー、のり
「鉄」… 牡蠣・鰹・春菊・枝豆・ほうれん草・あさりなど
「食物繊維」… 野菜(芋・ゴボウ・レンコン等)・豆類・きのこ・海藻など
「亜鉛」… 牡蠣・牛肉・米など
「カルシウム」… 牛乳・バター・桜エビ・しらす干し・豆腐・チーズなど
「エネルギー」… ごはん・麺・パンに主菜・副菜・量が食べられない時は、バター、マヨネーズ、クリームチーズ、生クリームなどの脂質の多い食品をプラスしましょう。
1日3回の食事にこだわらず1回の食事でたくさん食べられない時は回数を増やしたり、おやつ時間(10時、15時)を設定するのも良いでしょう。
必要エネルギーの指標
エネルギーの摂取量及び消費量のバランスの維持を示す指標にBMIを使用します。目標とするBMIの範囲内に体重を設定し、高齢者の場合には低栄養予防のためにも、エネルギーをしっかりと補うことが大事です。
身体活動レベルが「低い」のエネルギーで、体重維持がされていた場合には、食べる量をふやし、活動的な生活を心掛けましょう。
●普段の食事や補助栄養食品
食事をご自宅で用意されている方や宅配弁当を利用されている方もいらっしゃると思います。パンやカップ麺などの加工食品で食事を済ませず、肉、魚、卵、乳製品、大豆製品など、たんぱく質を多く含む食品を毎食におかず1品入れるようにしましょう。多種多様な食品を取り入れることで栄養をバランスよく摂取することができます。栄養を摂ることでリハビリの意欲や筋力のつき方も変化します。一度、現在の食事を確認してみてはいかがでしょうか。下記に関して、食品やご飯の量、おかずの量、宅配弁当の会社にもよって異なりますのでご参考程度に。
【宅配弁当の一例】
普通食:ご飯(160g)…269kcal + おかず…170kcl =439kcal
やわらか食:おかゆ(250g)…178kcal + おかず200kcl= 378kcal
宅配弁当は地域に特化している会社が多くあるため、インターネットで検索してみて下さい。
概ね全国をモーラしているのが、ワタミの宅配です。手渡しでご自宅までお届け出来るのは、
北海道、秋田、岩手、沖縄、その他一部エリアを除く全国が宅配エリアとなっています。
宅配ダイレクトというサービスを利用すれば、冷凍弁当・冷凍総菜は全国発送が可能です。
【自宅での一例】
普通食:ご飯一杯(160g)…269kcl + おかず(焼き魚+お浸し+味噌汁)200kcl =469kcl
やわらか食:おかゆ(150g)…87kcal + おかず(2品)約200kcl =287kcal ※キューピーやさしい献立を参照
補助栄養食品比較
※味によって各栄養素に差があります。
基礎疾患がある場合は、看護師、言語聴覚士、栄養士、薬剤師等にご相談下さい。
STとして関わる嚥下障害のみではなく、多くの要因で低栄養になるきっかけがあります。
安全に美味しく楽しい食事を継続して行っていくためにも、必要な栄養や食事方法に関して確認しましょう。また、デイサービスや地域支援事業に参加したり、訪問リハビリを活用し日常に即したリハビリをしながら外出する機会をつくりましょう。