言語聴覚士の訪問リハビリでは失語症、高次脳機能障害、嚥下障害を主に利用者様やご家族、周囲の人のため生活に即したリハビリを行えます。
言語聴覚士とは
言語聴覚士とは脳卒中などで言葉が不自由になり、うまく意思疎通ができない失語症や、記憶障害や注意力低下などがおこる高次脳機能障害、 発話が不明瞭でうまく意思が伝えられない構音障害、また、様々な要因で声が出ない音声障害など、 主にコミュニケーションの問題をもった患者様に対し、検査・評価を実施し、その方にあった訓練を行います。また、何らかの理由により、食べ物を飲み込んで口から胃へ送り込むことが困難になってまう嚥下障害になった方の評価、訓練を行います。
病院のリハビリと訪問リハビリの違い
病院では主に脳血管障害の患者様に対して、主に「言語訓練」「高次脳機能訓練」「摂食嚥下訓練」「構音訓練」を実施します。急性期病棟では、医師・看護師による全身管理を主に早期にリハビリを介入し離床や経口摂取の評価、高次脳や発語器官等の評価を行います。回復期病棟では障害が残存している機能面を高めることが重要としています。そのため、積極的に機能訓練を行います。
訪問リハビリでは、機能面の訓練も行いますが、自宅でのコミュニケーション手段の確立やスケジュールの把握、実際に食べられている食事形態やトロミの有無や間食の種類、食事動作や食事介助などの確認等を行います。食事指導を行うなかで、医療機関では管理栄養士や調理師の方が「刻み食」や「とろみ食」などのその方にあった食事を提供しています。しかし、病院食の場合はご本人やご家族が作ったものではないため、実際にご自宅で帰られてからの食事を想像することは難しいです。利用者様に合った食事や摂食嚥下訓練ができることが大きな違いです。また定期的に嚥下評価を行うため、状態変化に応じた食事指導ができるうえで誤嚥性肺炎の予防にも努めることができます。
【訪問リハ】失語症
脳の言語中枢が損傷されることで「話す・聞く・読む・書く」の言葉を操る能力に障害がある状態です。入院中に言語聴覚士による言葉のリハビリを行い、言語機能の改善を図ります。失語症が残存した場合、重症度によっては退院後も「言いたいことが伝えきれない」「話を全て聞き取れない」「一人で外出できない」等、悩みを抱えたままです。その場合に利用して頂きたいのが訪問リハビリです。病院で行ってきた機能訓練も行いますが、訪問リハビリでは家族とのコミュニケーション、外出や復職に向けての実践要素の近いリハビリを行います。利用者様の人柄や生活スタイル、趣味、家族背景などを知ることが大切です。ご本人や家族、周囲の方がどのように困っているのかを聴取し、会話や生活が充実できるよう努めます。
【訪問リハ】嚥下障害
訪問リハでは飲み込みにくさを感じる、ムセる頻度が増えた、誤嚥性肺炎が心配など様々な要因で嚥下訓練を希望されています。安全に食べたいもの、食べてもらいたいものを食べれるように、飲み込みの評価や訓練を行います。誤嚥性肺炎で入院し食形態が下がったまま退院されてくる方もいらっしゃいます。嚥下機能にもよりますが、できる限り本人の要望や生活環境に合わせ、安全に楽しく、美味しく食事が続けれるように、本人や家族と相談し食事形態を選択していきます。
【訪問リハ】高次脳機能障害
注意障害や記憶障害、半側空間無視などに対し自宅での一人時間や家族との時間、復職に向けてなど、目標に即して訓練を行います。家族の協力を得ながらリハビリ時間以外にも訓練のような形で、課題を提案させて頂くこともあります。
【訪問リハ】構音障害
脳血管障害後遺症による麻痺などで、口唇や舌の筋肉が低下することがあります。また加齢でも筋力の低下により、話しにくさを感じることがあります。滑舌が悪くなった場合に、発声発語器官を鍛える訓練を行います。
病院では全身状態に合わせながら、必要な評価を行い機能訓練を行います。その方の機能向上をメインに訓練を実施するため、自宅や施設での生活を全て把握し反映させることは、なかなか難しいです。その為にも、訪問看護ステーションに所属している言語聴覚士(ST)を利用し、QOLを上げて楽しい人生をおくって頂きたいです。